転生聖職者の楽しい過ごし方
 里桜とルシアンがエイスクルプチュルの上空に着いた時には、既に五頭は横たわって弱々しく翼や尻尾をバタつかせていた。
 ルシアンは急降下しうち一頭の尻尾を切った。里桜も一頭の尻尾へポインターを付け、力一杯矢を射った。その矢は見事に命中しエイスクルプチュルは絶命した。里桜が続いてもう一頭を射貫くと、残りの二頭はルシアンが止めを差した。
 二人はその場に降り立ち、周囲を見回す。

「焼け落ちた木々も勿論ありますけど、思っていたより冷害でやられている木々が多いですね。」

 ルシアンは言葉で返さないがそれが肯定の意味なのだろうと里桜は納得していた。

「結局ここに止まっていた理由はわかりませんでしたけど、港町には被害が出ていないようで良かったです。」
「弓矢の練習してたのか?」
「はい。魔獣討伐に向かうために狩りで練習してました。」
「エイスクルプチュルの尻尾に赤い点が付いていたが…」
「あれはポインターです。狙いを定めたら、そこに確実に矢が刺さるように。狩りでは使いませんでしたから、今日初めて使った魔術なんですけど、成功して良かったです。」
「ルシアン、リオ様。」

 二人が振り向くとロベールたちが到着していた。五頭のエイスクルプチュルはすでに液体化し始めている。

「あんなに暴れていたものをお二人で?」

 声を発したのは、騎士団第一団隊第三中隊長ボラン子爵だった。

「来たときにはかなり弱っていた。撒いた塩が効いたようで、止めを刺しただけだ。」
「山火事は大災害でしたけど、山火事のおかげでエイスクルプチュルが足止めされて一カ所に固まっていてくれたので、塩が撒きやすかったのが良かったのだと思います。そう言えば、負傷者は?これから治療に行った方がよろしいですか?」
「いや、負傷者ならばロベール様と私が治療を済ませた。自分自身の体を少し休ませなさい。結界の綻びも確認できて、瘴気の存在も感じ取り私どもも気力を奪われた。魔力の強い君にはこの場所は負担が大きいだろう。」
「あとはシドや他の者でも対応が出来る傷だ。命に別状のある負傷者はもういない。今日は薬草茶を飲んでとにかく休みなさい。」
「後始末はこちらに任せろ。助かった。」

 ルシアンのつっけんどんな物言いに少し笑ながら里桜は頷いて一礼した。


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 閑話集 
 アデライト・フロベール
 シャルル・エイクロン
 の2話更新しました。
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 赤井タ子ーAkai・Takoー

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