転生聖職者の楽しい過ごし方
第35話 里桜
私がこの世界へ来て十ヶ月が経とうとしている。最初はどんな冗談かと思ったけど、これは冗談ではなくて現実なんだと悟った。
だって、自分が失ったものを思うと胸は痛むし、どんなに泣いて眠っても目覚めるとやっぱり日本には戻れていなかった。
∴∵
帰りたかった。だから、沢山の勉強をした。沢山の本も読んだ。魔術を勉強すれば自分が帰る術を手に入れられるかも知れないから。沢山勉強すれば、実はみんなが隠している不都合な何かが見つかるかも知れないから。
結果は、元の世界に戻る方法はなかった。そもそも日本の私たちは死んでいる。一晩泣いて吹っ切った。と言うよりも、考える事に疲れた。本を読むことは好きだけど、勉強が好きなわけではない。考えるのも苦手。だから、考える内容を‘この世界で楽しく生きる方法’にすることにした。これならば楽しく考える事が出来る。
まず、目立つことは嫌い。これは絶対にイヤ。面倒くさいことも嫌い。出来るだけ避けたい。あとは、結婚。何時かは誰かととは思うけど、国王はイヤ。
何かのドラマか何かかと思うくらいに若くて、かっこいい国王。聞いてみれば、側室はいるけど、正妻がいないとか…そんな事あるの?とは思うけど、王妃選びの条件は色々と大変らしい。どこの国も王族の結婚って面倒なんだ。そんな面倒事に巻き込まれるのは御免だ。
目立つことと、国王の結婚相手は同じ日に転生してきたとしこさんがやってくれるみたいだし。私は、与えてくれる生活に見合う働きをする事だけを考えよう…。
そう、思っていた。
∴∵
私が自分の責任を果たさないばかりに、結局としこさんにしわ寄せが行ってしまった。皆が言うには、としこさんは救世主でいることに負担を感じているみたいだ。私はそれが嫌でとしこさんに全て押しつけた。
ちゃんと自分に虹の力があることを認めて、公表して、責任も負担もちゃんと背負わなきゃ。
∴∵
だけど…天馬に乗ったら、王族としてみなされるって…何?陛下はそんなことあの時、説明してくれなかった。でも、あの場で陛下にそんな説明を受けていたら?もちろん天馬には乗らなかった。乗るはずない。…やられた。
陛下に外堀を固められたんだ。としこさんの魔力が不安定になって弱まってしまっている今、安定的で最強の魔力を持っている私が次の妃候補ってわけか。
過去の伝承記を読んでも、渡り人は大抵の場合、王族と婚姻関係を結んでる。直接王と婚姻関係になくても、公爵と結婚をしてその子供を王室へ養子に出していたり。としこさんが王妃になることを望んでいる様だと聞いてすっかり安心していたけど、まさかとしこさんの魔力が弱まったらすぐにこちらに乗り換えてくるとは…。
あぁ。悠に会いたい。本当なら、私たちは今頃挙式をしていたはずだ。あのまま私が日本で生きていれば。
どうして私は異世界に来てしまったんだろう。どうして自分を愛してくれている訳でもない男と結婚しなければいけないんだろう。
だって、自分が失ったものを思うと胸は痛むし、どんなに泣いて眠っても目覚めるとやっぱり日本には戻れていなかった。
∴∵
帰りたかった。だから、沢山の勉強をした。沢山の本も読んだ。魔術を勉強すれば自分が帰る術を手に入れられるかも知れないから。沢山勉強すれば、実はみんなが隠している不都合な何かが見つかるかも知れないから。
結果は、元の世界に戻る方法はなかった。そもそも日本の私たちは死んでいる。一晩泣いて吹っ切った。と言うよりも、考える事に疲れた。本を読むことは好きだけど、勉強が好きなわけではない。考えるのも苦手。だから、考える内容を‘この世界で楽しく生きる方法’にすることにした。これならば楽しく考える事が出来る。
まず、目立つことは嫌い。これは絶対にイヤ。面倒くさいことも嫌い。出来るだけ避けたい。あとは、結婚。何時かは誰かととは思うけど、国王はイヤ。
何かのドラマか何かかと思うくらいに若くて、かっこいい国王。聞いてみれば、側室はいるけど、正妻がいないとか…そんな事あるの?とは思うけど、王妃選びの条件は色々と大変らしい。どこの国も王族の結婚って面倒なんだ。そんな面倒事に巻き込まれるのは御免だ。
目立つことと、国王の結婚相手は同じ日に転生してきたとしこさんがやってくれるみたいだし。私は、与えてくれる生活に見合う働きをする事だけを考えよう…。
そう、思っていた。
∴∵
私が自分の責任を果たさないばかりに、結局としこさんにしわ寄せが行ってしまった。皆が言うには、としこさんは救世主でいることに負担を感じているみたいだ。私はそれが嫌でとしこさんに全て押しつけた。
ちゃんと自分に虹の力があることを認めて、公表して、責任も負担もちゃんと背負わなきゃ。
∴∵
だけど…天馬に乗ったら、王族としてみなされるって…何?陛下はそんなことあの時、説明してくれなかった。でも、あの場で陛下にそんな説明を受けていたら?もちろん天馬には乗らなかった。乗るはずない。…やられた。
陛下に外堀を固められたんだ。としこさんの魔力が不安定になって弱まってしまっている今、安定的で最強の魔力を持っている私が次の妃候補ってわけか。
過去の伝承記を読んでも、渡り人は大抵の場合、王族と婚姻関係を結んでる。直接王と婚姻関係になくても、公爵と結婚をしてその子供を王室へ養子に出していたり。としこさんが王妃になることを望んでいる様だと聞いてすっかり安心していたけど、まさかとしこさんの魔力が弱まったらすぐにこちらに乗り換えてくるとは…。
あぁ。悠に会いたい。本当なら、私たちは今頃挙式をしていたはずだ。あのまま私が日本で生きていれば。
どうして私は異世界に来てしまったんだろう。どうして自分を愛してくれている訳でもない男と結婚しなければいけないんだろう。