転生聖職者の楽しい過ごし方

第36話 隠せなくなったもの 終

 王宮のガゼボで何故か私は陛下と優雅にお茶を飲んでいた。
 陛下は意を決したように、

「悪かった。」

 私が陛下の目をじっと見つめていると、

「天馬の事だ。説明せずに悪かった。」
「どなたかに怒られたのですか?」
「クロヴィスにもジルベールにもシルヴェストルにも。」

 そしてあからさまなため息を吐いた。

「それだけならまだ…ルシアンにも、ちゃんと説明すべき事だと叱られた。あいつはあまり普段から多くを話さないし、人に対して基本は無関心だからな。まさか、ルシアンにまで怒られるとは思わなかった。」

 陛下は何を思い出したのか、楽しそうに笑った。

「良い兄弟関係ですね。王位継承権とかが絡むと殺伐とした兄弟関係になる印象でしたけど。それに男兄弟って喧嘩しているわけでもないのにろくに話もしない印象だったから。」
「リオの持っている男兄弟に対する印象は偏っているな。」
「そうですか?」

 レース編みの様な模様がレリーフされた綺麗な白のカップには黄緑色のお茶が入っている。

「お茶は陛下がご用意下さったのですか?」
「アニアが謝罪の気持ちがあるならば、用意してみろと。」
「アナスタシアさんはそんな事言いませんよ。」
「リオの国で飲んでいた茶なのだと聞いた。」
「こんなに素敵なティーセットでは飲みませんでしたけど。」
「そうなのか。綺麗な黄緑の色が良く映えると思ったんだけれどな。」

 里桜は笑いながら緑茶を口に運んだ。

「リオが元の国ではどんな町に住んで、何を食べていたのか、どう暮らしていたのか、ここでの暮らしとどう違うのか。俺はリオをもっと知りたい。」


∴∵


「トシコ様、先日お話し致しました魔獣についてのお話し覚えていらっしゃいますか?」

 鉄格子が付いている窓をぼんやりと眺めていると、神官が声をかけてきた。

「あまり記憶にない。魔獣にはもつ魔力によって上中下の位があるとか、下位の魔獣なら無理に討伐しなくても人を攻撃したりはしないとか、でも増えすぎると動物を襲って生態系に影響を及ぼす危険もあるとか・・・そんな話だったけ?でも魔獣の名前とかは・・・。」
「トシコ様はこれから魔獣討伐などをして頂く機会もあるかと存じます。魔獣の名前と能力と弱点は覚えて頂いていた方がよろしいでしょう。」

 神官は手元の本を開いた。

「いつまでこんな生活をしなくちゃいけないの?」
「ロベール様からは詳しく聞いておりませんが、救世主様の体力が回復するまでと。」
「体力なら十分回復したじゃない。」
「申訳ありません。私に分かることはありませんので。」

 神官は困った様子で利子に謝った。

「わかった。さぁ続けて。魔獣の話。」
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