転生聖職者の楽しい過ごし方
第38話 変ったこと
「どう言う事?」
「ですから、先月渡り人のリオ様が虹の女神様であったことが披露されました。」
「虹の女神って何よ。」
利子はテーブルに乗り出さんばかりの勢いで聞いた。
「建国神話にございます・・」
「それは何となく聞いたわよ。神が女に逃げられたとかで、泉に虹の橋を架けたんだかなんだかって。」
「はい。国民の間では、神話だけでの存在でしたが、王室や神殿では古くから語り継がれておりました。通常の救世主様ですと白金の力を持ちますが、女神様はそれ以上のお力をお持ちでございます。」
「それがあの子だって、なんの証拠があるのよ。」
利子はテーブルを叩く。
「お披露目の式典で結界の補修を致しましたところ、青・緑・黄・橙・赤・白・白金、全ての色をした光の柱を見せました。まるで女神様のお体から虹が発生したみたいに。とても美しく神々しいお姿でした。」
「…そう。それは凄いわね。」
∴∵
「おーこれが、以前にリオが言っていた写真と言う技術か。」
里桜は日本で使っていた入館証をレオナールに見せていた。
「これ自体は少し、違うのですが…。」
「これが、前の世界でのリオか。しかし、目の前のリオの方が柔らかく優しい笑顔だ。写真を作った者は腕が良くないようだ。」
写真の私が疲れた顔で笑っているのは、繁忙期と本社社屋の移転が重なって死ぬほど忙しい中で、新しい入館証用の写真を撮らなくちゃいけなかったから。
それ、最高潮に忙しい時だから。総務を訴えたいくらいの写真なんだから。撮る時期ってものがあるでしょうよ。
「写真は描くのとは全く違う方法で、専用の道具で映しているんです。だから、こう言う物では撮る人の腕はそんなに関係ないかもしれません。もっと沢山の写真をお見せ出来たのですが、その道具をこちらに来るときになくしてしまったみたいで。」
里桜は寂しそうな顔をした。
「それで、リオはどんな世界でどんな生活をしていた?」
レオナールのあまりに真っ直ぐな視線に、里桜は照れくさくなった。
「えっと…まずは、魔法はない世界のとても大きな大陸の東側にある島国で生まれました。八歳離れた兄と四歳離れた姉がいます。一歳の時に父が亡くなり、母方の実家に移り住んで、十八歳で働き始めて、二十歳で一人暮らしを始めました。贅沢な暮らしや、今のように誰かに生活のお世話をしてもらえる人生ではありませんでしたが、身の丈にあった生活が出来ていたと思っています。」
「お父上は何故亡くなった?戦争か?」
「戦争ではなく、病気です。仕事中に倒れ、家族は最後のお別れも出来なかったそうです。私は勿論父の記憶はありません。」
里桜がレオナールに向かって微笑むと、レオナールも微笑み返した。
「移り住んだ母方の実家とはどんな町なんだ?一人暮らしとは…危険ではないのか?何か危ない目に遭っていなかっただろうな?」
「陛下、質問ばかりですね。」
里桜は困って笑った。
「リオがどんな風に生活をしていたのか、想像するのは楽しい。きっとリオのことだから周りを楽しませていたのだろうな。…リオの事となると、どんな些細なことでも知りたいと思うし、心配をしてしまうんだ。」
∴∵
「とても素晴らしいです。トシコ様。」
「ありがとうございます。レイベス尊者。」
結界が修復されたことで利子の魔力も回復し、白の魔力まで戻っていた。
里桜が虹の女神として活躍している事を聞いてからの利子は、尊者や聖徒たちの言うことを聞き、日々勉強に励んでいた。その事が評価され、監護室から出ることを赦され、一先ず王宮の客室に移っていた。
「やはり、トシコ様も渡り人でいらっしゃる。とても豊富な魔力でございます。」
今は、神殿の一室で魔術の練習をしていて、バケツ三杯分の水を出している。
「前は安定せずにちょうど良い水量を出せませんでしたが、今日はぴったり水を止める事が出来ましたね。次回からは、火の魔術を勉強致しましょう。」
「はい。わかりました。レイベス尊者ありがとうございます。」
利子は侍女と歩いて客室へ戻る。
利子の生活はあれから一転した。護衛は騎士ではなく国軍になり、住まいは離宮ではなく王宮の客間。救世主として作ったドレスは客室のクローゼットには収まりきれず、居間に置かれている。マクシミリアンやウィリアムは今は一切顔を見せず、お茶会の誘いもなくなった。
「セザール、護衛ご苦労様。今日はもう部屋から出ないし、もう帰っていいわ。」
自室としている客室の前で利子は護衛の兵士に言った。
「いいえ、交代の時間までこちらに居ります。」
「そう。わかったわ。」
部屋に入ると、ソファーに座り読みかけの本を読み始めた。
「ですから、先月渡り人のリオ様が虹の女神様であったことが披露されました。」
「虹の女神って何よ。」
利子はテーブルに乗り出さんばかりの勢いで聞いた。
「建国神話にございます・・」
「それは何となく聞いたわよ。神が女に逃げられたとかで、泉に虹の橋を架けたんだかなんだかって。」
「はい。国民の間では、神話だけでの存在でしたが、王室や神殿では古くから語り継がれておりました。通常の救世主様ですと白金の力を持ちますが、女神様はそれ以上のお力をお持ちでございます。」
「それがあの子だって、なんの証拠があるのよ。」
利子はテーブルを叩く。
「お披露目の式典で結界の補修を致しましたところ、青・緑・黄・橙・赤・白・白金、全ての色をした光の柱を見せました。まるで女神様のお体から虹が発生したみたいに。とても美しく神々しいお姿でした。」
「…そう。それは凄いわね。」
∴∵
「おーこれが、以前にリオが言っていた写真と言う技術か。」
里桜は日本で使っていた入館証をレオナールに見せていた。
「これ自体は少し、違うのですが…。」
「これが、前の世界でのリオか。しかし、目の前のリオの方が柔らかく優しい笑顔だ。写真を作った者は腕が良くないようだ。」
写真の私が疲れた顔で笑っているのは、繁忙期と本社社屋の移転が重なって死ぬほど忙しい中で、新しい入館証用の写真を撮らなくちゃいけなかったから。
それ、最高潮に忙しい時だから。総務を訴えたいくらいの写真なんだから。撮る時期ってものがあるでしょうよ。
「写真は描くのとは全く違う方法で、専用の道具で映しているんです。だから、こう言う物では撮る人の腕はそんなに関係ないかもしれません。もっと沢山の写真をお見せ出来たのですが、その道具をこちらに来るときになくしてしまったみたいで。」
里桜は寂しそうな顔をした。
「それで、リオはどんな世界でどんな生活をしていた?」
レオナールのあまりに真っ直ぐな視線に、里桜は照れくさくなった。
「えっと…まずは、魔法はない世界のとても大きな大陸の東側にある島国で生まれました。八歳離れた兄と四歳離れた姉がいます。一歳の時に父が亡くなり、母方の実家に移り住んで、十八歳で働き始めて、二十歳で一人暮らしを始めました。贅沢な暮らしや、今のように誰かに生活のお世話をしてもらえる人生ではありませんでしたが、身の丈にあった生活が出来ていたと思っています。」
「お父上は何故亡くなった?戦争か?」
「戦争ではなく、病気です。仕事中に倒れ、家族は最後のお別れも出来なかったそうです。私は勿論父の記憶はありません。」
里桜がレオナールに向かって微笑むと、レオナールも微笑み返した。
「移り住んだ母方の実家とはどんな町なんだ?一人暮らしとは…危険ではないのか?何か危ない目に遭っていなかっただろうな?」
「陛下、質問ばかりですね。」
里桜は困って笑った。
「リオがどんな風に生活をしていたのか、想像するのは楽しい。きっとリオのことだから周りを楽しませていたのだろうな。…リオの事となると、どんな些細なことでも知りたいと思うし、心配をしてしまうんだ。」
∴∵
「とても素晴らしいです。トシコ様。」
「ありがとうございます。レイベス尊者。」
結界が修復されたことで利子の魔力も回復し、白の魔力まで戻っていた。
里桜が虹の女神として活躍している事を聞いてからの利子は、尊者や聖徒たちの言うことを聞き、日々勉強に励んでいた。その事が評価され、監護室から出ることを赦され、一先ず王宮の客室に移っていた。
「やはり、トシコ様も渡り人でいらっしゃる。とても豊富な魔力でございます。」
今は、神殿の一室で魔術の練習をしていて、バケツ三杯分の水を出している。
「前は安定せずにちょうど良い水量を出せませんでしたが、今日はぴったり水を止める事が出来ましたね。次回からは、火の魔術を勉強致しましょう。」
「はい。わかりました。レイベス尊者ありがとうございます。」
利子は侍女と歩いて客室へ戻る。
利子の生活はあれから一転した。護衛は騎士ではなく国軍になり、住まいは離宮ではなく王宮の客間。救世主として作ったドレスは客室のクローゼットには収まりきれず、居間に置かれている。マクシミリアンやウィリアムは今は一切顔を見せず、お茶会の誘いもなくなった。
「セザール、護衛ご苦労様。今日はもう部屋から出ないし、もう帰っていいわ。」
自室としている客室の前で利子は護衛の兵士に言った。
「いいえ、交代の時間までこちらに居ります。」
「そう。わかったわ。」
部屋に入ると、ソファーに座り読みかけの本を読み始めた。