転生聖職者の楽しい過ごし方
「はー。どうすれば良いのだ。私がどれだけあのニセ救世主に金を使ったと思ってる。細やかに世話をしてこちらでは親がいない渡り人の親代わりになり、後には我が家門が国王の外戚になれると…。全てはあの女が王妃になると見越しての先行投資だったはずなのに…。」
マクシミリアンはソファーに腰掛け、貧乏揺すりをする。
「だから、前に私が言ったではありませんか。リオ嬢の方が穏やかでよい子だと。」
「おー。そうだ。お前あの役立たずの娘に熱をあげていただろう。どうだ?お近づきになれたのか?」
足の動きを止めて、向かいに座る息子に身を乗り出す様に尋ねる。
「国軍の輩は彼女に力があると、初めから知っていたのに黙っていたのです。普通の渡り人にしては守りが固すぎると思っていたのです。ある日など、寮のエントランスにも入れないから、上官へこの無礼を報告するぞと言ってやったら、非番なので上官は関係ないと言われました。寮監も要件をうるさく聞いてくるし。たかが寮監のくせして、随分偉そうなんですよ。」
「結局、近づく事も許されていないんだな。お前こそ役立たずだな。」
マクシミリアンは鼻で笑った。
「イリスの茶会にも欠席の返事が来たと言うし…。」
「名が良くないのでは?本物のIrisなのは、あちらなのですから。」
「・・・。」
マクシミリアンは顎を触りながら、何やら思案する。
「そうだ。前に狩りで遊んでいると聞いた。狩りだ。我が領地には絶好の狩り場がある。陛下と共に狩りへお誘いしよう。二人がそこで絆を深めてくれれば、観光地として栄えるかもしれん。そうだ。そうしよう。」
マクシミリアンはにやけて言う。
「その後に晩餐会をするぞ。虹の女神の好物や趣味を徹底的に調べろ。全て最高級の物だ。牛肉でもワインでも女神の好物の最高級品を用意しろ。良いなルイ。」
「鶏肉です。」
「は?」
「ニワトリの肉が好きなようです。」
「そんな庶民の食べ物。」
「王宮の者が言っていました。」
マクシミリアンは頷く。
「ならば、鶏肉を用意しろ。何でも良いから、とにかく虹の女神の好物を用意しろ。」
∴∵
「ジョルジュ神官。他に書類は?」
「虹の女神様。本日の書類は以上でございます。」
神官のジョルジュは畏まって頭を下げた。
「ジョルジュ神官。その呼び名はやめて下さいと言ったでしょう。」
ジョルジュは、人懐っこい笑顔を見せる。
「リオ様が、虹の女神だと公表されてから、神官や聖徒からリオ様はどんな人なのか、世話係に召し上げてくれる様口利きして欲しいと頼まれるのです。」
ジョルジュは急に顔を曇らせた。
「皆さん勝手です。トシコ様を救世主だと持ち上げていた時は、リオ様が毎日頑張っていらっしゃっても“何もしない”とか“役立たず”とか散々言っていたのに。手のひらを返して…。」
「ジョルジュ神官。その書類、早く持って行ってもらわないと、私、今度は‘おサボり女神’って言われてしまうから。さぁ早く持って行って。それと、今回のことは仕方のないことだから。あまり周りの人を悪く言っては駄目だからね。ジョルジュ神官は優しくてよく気が利く賢い人なのに勘違いされちゃうから。さぁ、行って。」
里桜はジョルジュの背を見てため息を吐く。
「ジョルジュさんも嬉しい様な悔しい様な気持ちなのだと思います。」
アナスタシアは笑顔を見せる。
「リオ様のされていることは、公表前も公表後も変わりはないのに、今のリオ様には多くの人が取り入ろうとされています。自分が尊敬する方が世間で認められた嬉しさもあり、何も変わりないのに周りの対応だけが変わって。戸惑う気持ちもあるのだと思います。」
里桜は私物を片付けながら、笑って聞いていた。
マクシミリアンはソファーに腰掛け、貧乏揺すりをする。
「だから、前に私が言ったではありませんか。リオ嬢の方が穏やかでよい子だと。」
「おー。そうだ。お前あの役立たずの娘に熱をあげていただろう。どうだ?お近づきになれたのか?」
足の動きを止めて、向かいに座る息子に身を乗り出す様に尋ねる。
「国軍の輩は彼女に力があると、初めから知っていたのに黙っていたのです。普通の渡り人にしては守りが固すぎると思っていたのです。ある日など、寮のエントランスにも入れないから、上官へこの無礼を報告するぞと言ってやったら、非番なので上官は関係ないと言われました。寮監も要件をうるさく聞いてくるし。たかが寮監のくせして、随分偉そうなんですよ。」
「結局、近づく事も許されていないんだな。お前こそ役立たずだな。」
マクシミリアンは鼻で笑った。
「イリスの茶会にも欠席の返事が来たと言うし…。」
「名が良くないのでは?本物のIrisなのは、あちらなのですから。」
「・・・。」
マクシミリアンは顎を触りながら、何やら思案する。
「そうだ。前に狩りで遊んでいると聞いた。狩りだ。我が領地には絶好の狩り場がある。陛下と共に狩りへお誘いしよう。二人がそこで絆を深めてくれれば、観光地として栄えるかもしれん。そうだ。そうしよう。」
マクシミリアンはにやけて言う。
「その後に晩餐会をするぞ。虹の女神の好物や趣味を徹底的に調べろ。全て最高級の物だ。牛肉でもワインでも女神の好物の最高級品を用意しろ。良いなルイ。」
「鶏肉です。」
「は?」
「ニワトリの肉が好きなようです。」
「そんな庶民の食べ物。」
「王宮の者が言っていました。」
マクシミリアンは頷く。
「ならば、鶏肉を用意しろ。何でも良いから、とにかく虹の女神の好物を用意しろ。」
∴∵
「ジョルジュ神官。他に書類は?」
「虹の女神様。本日の書類は以上でございます。」
神官のジョルジュは畏まって頭を下げた。
「ジョルジュ神官。その呼び名はやめて下さいと言ったでしょう。」
ジョルジュは、人懐っこい笑顔を見せる。
「リオ様が、虹の女神だと公表されてから、神官や聖徒からリオ様はどんな人なのか、世話係に召し上げてくれる様口利きして欲しいと頼まれるのです。」
ジョルジュは急に顔を曇らせた。
「皆さん勝手です。トシコ様を救世主だと持ち上げていた時は、リオ様が毎日頑張っていらっしゃっても“何もしない”とか“役立たず”とか散々言っていたのに。手のひらを返して…。」
「ジョルジュ神官。その書類、早く持って行ってもらわないと、私、今度は‘おサボり女神’って言われてしまうから。さぁ早く持って行って。それと、今回のことは仕方のないことだから。あまり周りの人を悪く言っては駄目だからね。ジョルジュ神官は優しくてよく気が利く賢い人なのに勘違いされちゃうから。さぁ、行って。」
里桜はジョルジュの背を見てため息を吐く。
「ジョルジュさんも嬉しい様な悔しい様な気持ちなのだと思います。」
アナスタシアは笑顔を見せる。
「リオ様のされていることは、公表前も公表後も変わりはないのに、今のリオ様には多くの人が取り入ろうとされています。自分が尊敬する方が世間で認められた嬉しさもあり、何も変わりないのに周りの対応だけが変わって。戸惑う気持ちもあるのだと思います。」
里桜は私物を片付けながら、笑って聞いていた。