転生聖職者の楽しい過ごし方
第39話 変らないこと
里桜が寮の居室に戻ると、花束が届けられていた。
「かわいい。ピンクだけど…この葉っぱって。リナさんこれは、あやめ?」
「アヤメ?」
「かきつばた?」
「カキツバタ?」
「菖蒲?」
「ショウブ・・・?」
妙な会話にリナもアナスタシアも里桜も笑った。
「このお花は何?日本だと、似ている花が多くて私には違いが分からないんです。」
「アイリスでございます。」
「アイリス…あやめって、青っぽい紫とか白が入った紫色の印象でしたけど、薄ピンクもあるんですね。」
「はい。 ‘サクライロ’ のアイリスは陛下からでございます。アイリスの語源はイリス。虹の女神ですから。謂わばこの花はリオ様のお花でございますね。」
里桜は置かれた花束を胸に抱えた。
「リナさん。お花生けておいて下さい。あと、陛下にお返事を書くので…厨房からワインを一本貰ってきて頂けますか?」
「ワインですか?」
「えぇ。陛下へのお返しに。」
「はい。分かりました。」
∴∵
「書類にサインを貰おうと思ったが…飲むには少し早いんじゃないか?」
執務室にいるレオナールは机にワインを置き、手にはカードを持っている。
「リオからのお礼だ。」
「今度は馬じゃなく何をやったんだ?」
「アイリスの花。」
クロヴィスは思わず吹き出した。
「お前、いつからそんな夢見がちな男になった?そんで?そのカードは?」
レオナールは、カードをクロヴィスに渡す、そのカードには、
‘アイリス、ありがとうございます。私の育った世界では、イリスの神話は異世界とは少し違います。全知全能の神ゼウス王は妻ヘラの侍女を見初めました。侍女は困りヘラに相談したところ、ヘラは侍女に七色の首飾りを付け、髪に三滴の酒をかけて虹の女神に変身させるのです。王とは…妻がいても他の女性に手を出さずにはいられないのですね。お花のお礼ですお受け取り下さい。リオ’
クロヴィスは声を出して笑った。
「リオには気持ちが全く伝わっていないと言うわけか。」
「リオ嬢の国では一夫一婦制らしいぞ。夫でも妻でもどちらかがそれ以外の相手と関係すれば離縁の正当な理由にもなるし、社会的にも非難されると。そんな国でそれを普通として生きてきたんだ。妃も子供もいるお前に言い寄られてもな。」
「ベルナルダもアリーチェも俺が欲して妃にした。それは事実だからな。」
∴∵
「陛下、是非とも私たちの領に狩りへいらしてください。その時は是非虹の女神様もご一緒に。」
クロヴィスは、隣で苦笑いしている。
「私も狩りは趣味でして、虹の女神様も狩りが趣味で月に何度も狩り遊びをされていると聞きます。」
「それはどなたからの情報でしょうか?」
渡り人は狩りばかりしているとくちさがない者からの情報ですとは、さすがのマクシミリアンも言えず、口ごもる。
「それは……どなただったかまでは……。」
「そうですか、それで彼女は何と返事をしたのです?」
「お誘いはありがたいが、神殿の仕事があるので遠慮すると。」
「ならば、彼女を連れていくことは無理ですね。それに彼女はもう狩りをやめました。」
「やめた?」
「狩りは魔獣討伐のための練習で、趣味や遊びではありません。訓練の一部です。今は、ロベール大叔父が出す動く土壁や飛ぶ葉などで練習をしています。国軍の練習場で練習が出来るようになって、狩りへ行く必要がなくなりましたので。」
「そっそうでしたか……。そうだ。虹の女神就任の祝いをお贈りしたいのですが、虹の女神様は、どのようなお召し物や宝飾品がお好きなのでしょうか?先日お贈りした首飾りは、"尊者には必要ありません"と戻って来てしまいました。」
レオナールは呆れて言う。
「彼女は宝飾品やドレスには興味がないようですよ。」
「そんなはずはないでしょう。女は子どもでも年寄りでも宝飾品を喜ぶでしょう。差し上げた首飾りの宝石が小さかったのでしょうか?」
あなたがそう言う人だから、周りにはそう言う人しか集まらないのでは?の言葉は飲み込んだ。
「まぁ、とにかく。彼女がお気遣いなくと言うのなら、気を遣わずにいれば良いのではないでしょうか?私は忙しいので、何か仕事の話でなければもうよろしいですか?」
レオナールは腰を上げて、マクシミリアンに帰るよう促した。
「かわいい。ピンクだけど…この葉っぱって。リナさんこれは、あやめ?」
「アヤメ?」
「かきつばた?」
「カキツバタ?」
「菖蒲?」
「ショウブ・・・?」
妙な会話にリナもアナスタシアも里桜も笑った。
「このお花は何?日本だと、似ている花が多くて私には違いが分からないんです。」
「アイリスでございます。」
「アイリス…あやめって、青っぽい紫とか白が入った紫色の印象でしたけど、薄ピンクもあるんですね。」
「はい。 ‘サクライロ’ のアイリスは陛下からでございます。アイリスの語源はイリス。虹の女神ですから。謂わばこの花はリオ様のお花でございますね。」
里桜は置かれた花束を胸に抱えた。
「リナさん。お花生けておいて下さい。あと、陛下にお返事を書くので…厨房からワインを一本貰ってきて頂けますか?」
「ワインですか?」
「えぇ。陛下へのお返しに。」
「はい。分かりました。」
∴∵
「書類にサインを貰おうと思ったが…飲むには少し早いんじゃないか?」
執務室にいるレオナールは机にワインを置き、手にはカードを持っている。
「リオからのお礼だ。」
「今度は馬じゃなく何をやったんだ?」
「アイリスの花。」
クロヴィスは思わず吹き出した。
「お前、いつからそんな夢見がちな男になった?そんで?そのカードは?」
レオナールは、カードをクロヴィスに渡す、そのカードには、
‘アイリス、ありがとうございます。私の育った世界では、イリスの神話は異世界とは少し違います。全知全能の神ゼウス王は妻ヘラの侍女を見初めました。侍女は困りヘラに相談したところ、ヘラは侍女に七色の首飾りを付け、髪に三滴の酒をかけて虹の女神に変身させるのです。王とは…妻がいても他の女性に手を出さずにはいられないのですね。お花のお礼ですお受け取り下さい。リオ’
クロヴィスは声を出して笑った。
「リオには気持ちが全く伝わっていないと言うわけか。」
「リオ嬢の国では一夫一婦制らしいぞ。夫でも妻でもどちらかがそれ以外の相手と関係すれば離縁の正当な理由にもなるし、社会的にも非難されると。そんな国でそれを普通として生きてきたんだ。妃も子供もいるお前に言い寄られてもな。」
「ベルナルダもアリーチェも俺が欲して妃にした。それは事実だからな。」
∴∵
「陛下、是非とも私たちの領に狩りへいらしてください。その時は是非虹の女神様もご一緒に。」
クロヴィスは、隣で苦笑いしている。
「私も狩りは趣味でして、虹の女神様も狩りが趣味で月に何度も狩り遊びをされていると聞きます。」
「それはどなたからの情報でしょうか?」
渡り人は狩りばかりしているとくちさがない者からの情報ですとは、さすがのマクシミリアンも言えず、口ごもる。
「それは……どなただったかまでは……。」
「そうですか、それで彼女は何と返事をしたのです?」
「お誘いはありがたいが、神殿の仕事があるので遠慮すると。」
「ならば、彼女を連れていくことは無理ですね。それに彼女はもう狩りをやめました。」
「やめた?」
「狩りは魔獣討伐のための練習で、趣味や遊びではありません。訓練の一部です。今は、ロベール大叔父が出す動く土壁や飛ぶ葉などで練習をしています。国軍の練習場で練習が出来るようになって、狩りへ行く必要がなくなりましたので。」
「そっそうでしたか……。そうだ。虹の女神就任の祝いをお贈りしたいのですが、虹の女神様は、どのようなお召し物や宝飾品がお好きなのでしょうか?先日お贈りした首飾りは、"尊者には必要ありません"と戻って来てしまいました。」
レオナールは呆れて言う。
「彼女は宝飾品やドレスには興味がないようですよ。」
「そんなはずはないでしょう。女は子どもでも年寄りでも宝飾品を喜ぶでしょう。差し上げた首飾りの宝石が小さかったのでしょうか?」
あなたがそう言う人だから、周りにはそう言う人しか集まらないのでは?の言葉は飲み込んだ。
「まぁ、とにかく。彼女がお気遣いなくと言うのなら、気を遣わずにいれば良いのではないでしょうか?私は忙しいので、何か仕事の話でなければもうよろしいですか?」
レオナールは腰を上げて、マクシミリアンに帰るよう促した。