祓い屋少女と守護の眷属
私には昔から、視えないはずのものが視えた。
初めて見たのは六歳の時。おばあちゃんが死んだ日だった。
おばあちゃんの家にある畳の間で一人しくしく泣いていると、真っ白い光の塊のようなものが畳の間をうろちょろし、私の周囲をぐるぐる回り始めたのだ。
おばけだと思ってビビり散らかした私は、忙しそうにしているお母さんのところまで走っていって泣き喚いた。
おばあちゃんが死んだばかりで忙しかったお母さんからしたら迷惑極まりなかっただろう。
あの光のせいで、お母さんの方が悲しいだろうから隠れて泣いていたのに意味がなくなってしまった。
その日から私は、この世界に蔓延る“不浄”が視えるようになった。
いや、これはかっこいい言葉を使ってかっこつけてるわけではない。実際視えるのだ。
ふざけていると思われるかもしれないが、私の幻覚でもなんでもなく、人の罪や災厄の気配、霊までも視えるようになってしまったのだ。
事故を起こすであろう車も大体分かる。走っている車を見ていてア、ヤバいな、と思うと次の瞬間には電柱に突っ込んでいたことすらある。
何故私にこんな変化が起きたのかは分からない。
お母さんもお父さんもお兄ちゃんも不浄が視えるどころか霊感が微塵もなく、幽霊が彷徨いている場所でも平気な顔をして通っていく。私が視えるのは遺伝的な才能というわけでもないだろう。
もう一つ不可解なことがある。
おばあちゃんが死んだ日に私の周りをぐるぐる回っていた光の塊、あれはあの日以来ずっと私に付いてきている。
家でも部屋まで付いてくるし、学校の教室にも付いてくる。ストーカーのごとくどこまでも付いてくる。ずっとそばにいて何もしてこないので、おそらく悪い霊の類ではないだろう。私が視える不浄とは気配も違う。
私に付いてくるあの真っ白な何かが何なのかは、十六歳になった今も分かっていない。