ラーシャス・ポイズン
プロローグ




五十リットルのワンルームバスタブ。

雨に濡れた私をお湯の溜まっていくそこへ追いやった彼は、私の後頸部と後頭部を押さえて覗き込んだ。その眉間にはしっかりと皺が刻まれていて、鋭い瞳が私の顔を映している。まるで視線のみで支配下に置かれたように、瞬きの仕方すら忘れた。呪いのように鎖で縛られたわたし、その私にこの男は何らかの感情を抱いていて、それが決して純粋な愛情でないことを私は知っていた。


「その駄犬が媚びた匂い消してから来いよぉ?」


容赦のない声を出す彼の、以前は不気味だと思っていたはずの瞳の色が吸い込まれる程に綺麗で、整った顔立ちが私の知る他の誰とも異なる繊細な魅力を持っていて、彼への気持ちが彼にバレないように、絶対にバレないように、吐きかけた息を呑む。





――――……こんな複雑な四角関係にはなりたくなかった。






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