ラーシャス・ポイズン
放課後になり、完全下校時刻も近付いた。
赤く染まった空を少し大きい雲が覆い、小雨が降り続けていた。
柊くんの仕事が終わるのもそろそろだろうと思った。
机の上に開いていた参考書を閉じ、制定鞄に入れ、もう誰もいなくなった教室を出る。
放課後の補習をまだ行っている勉強熱心なクラスの前を通り過ぎ、階段を下り、中庭の見える廊下へ向かう。
廊下に生徒はおらず昼間よりうんと静かで、外のライトが点灯し始めていた。
中庭に柊くんの背中を見つけた。
私は立ち止まった。
声を掛けようとしてもう一人の影を見つけた。
呼ぼうとした名前をどうして呑み込んでしまったのか分からない。
影はその細い腕を伸ばし柊くんに触れる。柊くんが何もせず受け入れる。
その動きに覚えがあって呼吸の仕方を忘れるような心地がした。
心臓の音だけが煩かった。