シリアル・ホラー
「成敗!」

 返り血のついた顔で、ゆうじがニカッと笑う。僕は恐ろしくなって走り出した。

「わああああ~っ!」
「おい、まこと!」

 ゆうじが叫ぶも、それどころではなかった。
 なんだ?
 なにが起こってるんだ?
 友達が人を普通に殺し、周りはそれを見ても何とも思わない。
 そんなことってあるのか?
 これって現実なのか?
 学校とは反対方向へ向かって、めちゃくちゃに走りまくる。
 気がつくと大きな駅前に出ていた。

「え……」

 飛び散る血飛沫。
 響き渡る悲鳴。
 逃げ惑う人々。
 関係ないとばかりに、駅の中へ歩いて行く人達。
 地獄と日常が、目の前に広がっていた。

「な、なんだよこれ……」

 すれ違いざまに刃物を顔面に突き刺すサラリーマン。
 お婆さんに後ろから飛びかかり、全身を滅多刺しにする女子高生。
 コンクリートブロックを両手で持ち上げ、元は小学生だったらしい子どもの頭を潰している老人。
 それらの間を、スマホを見ながら普通に歩いて行く中学生や高校生たち。
 警察官が自転車に乗って、通り過ぎていく。
 止めるでもなく、騒ぐでもなく。

「おい」

 肩を引かれてよろめいた。
 ゆうじだった。

「まこと、お前“ともだち”だよな」
「へ?」

 ゆうじはさっき見た時のまま、顔に返り血をべったりと付けている。手には血の付いた包丁。先端から血が滴っていた。

「お前、“ともだち”だよな?」

 何を言っているのかわからない。
 でも答えは一つしかない。

「もちろんだ」

 ゆうじはニカッと笑って僕のお腹を刺した。


―― 了 ――
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