シリアル・ホラー
2 エレベータ
殺人的な暑さも、10月半ばになるとようやく落ち着いてきた。私は四季の中では、秋が断然好きだ。気温がほどよいということももちろんあるが、寒い冬やクリスマス、年末年始などのイベントを控え、世の中がなんとなく忙しなく、沸き立つような雰囲気になる。そんな空気が大好きだ。
私はパンプスの踵をアスファルトに鳴らしながら、大手町の高層ビル街の中を歩いていた。これから得意先を訪問する予定だったからだ。10:00をようやく回ったところだったので、終わった後はこの辺でランチを済ませていこう。
なるべくあの職場には、戻りたくない。
私は職場の“お局様”である片山のクソムカつく面を思い浮かべ、心の中で唾棄した。
『あなた、どういうつもりでこれを書いたの?』
「え、ど、どういうつもりって……」
『これ、あなた、ちゃんと読み返したの?』
「い、一応……」
『一応って、あなた社会人として自覚はあるの? お給料もらってんでしょ?』
「は、はぁ……」
『日本語としておかしなところもあるし、書式だって整ってない。書き直すにしたってまたフォーマットから作り直し。二度手間もいいところじゃない』
「は、はい、すみませ」
『〆切は今週中だってわかってこういう無責任なことしてるの? もういい加減仕事覚えてちょうだい』
「……」
毎日がこんな調子だった。
私はパンプスの踵をアスファルトに鳴らしながら、大手町の高層ビル街の中を歩いていた。これから得意先を訪問する予定だったからだ。10:00をようやく回ったところだったので、終わった後はこの辺でランチを済ませていこう。
なるべくあの職場には、戻りたくない。
私は職場の“お局様”である片山のクソムカつく面を思い浮かべ、心の中で唾棄した。
『あなた、どういうつもりでこれを書いたの?』
「え、ど、どういうつもりって……」
『これ、あなた、ちゃんと読み返したの?』
「い、一応……」
『一応って、あなた社会人として自覚はあるの? お給料もらってんでしょ?』
「は、はぁ……」
『日本語としておかしなところもあるし、書式だって整ってない。書き直すにしたってまたフォーマットから作り直し。二度手間もいいところじゃない』
「は、はい、すみませ」
『〆切は今週中だってわかってこういう無責任なことしてるの? もういい加減仕事覚えてちょうだい』
「……」
毎日がこんな調子だった。