シリアル・ホラー
 1が点いてドアが開く。明るいエントランスに比べて人工灯の光は薄暗く感じるが、私はエレベータに乗り込んで「4」のボタンを押した。軽い浮遊感を得て、エレベータが上昇していく。腕時計を見ると9:58。ぴったりだ。ドアの上の階数表示を見る。2…… 3…… 次だ。私は身構えて降りる準備をする。
 しかしエレベータは止まらずに上昇し続けた。

「え?」

 5…… 6。ポンと軽い音がして、上昇が止まる。ゆっくりとドアが開くと、薄暗いホールが広がっていた。作りは1Fとさほど変わらない。玄関ドアの代わりに、左右に通路が伸びていた。

「間違って押しちゃったのかな?」

 ドアから首だけ出して周囲を確認し、もう一度中に戻って今度はしっかりと4を押した。ゆっくりとドアが閉まり、軽い浮遊感と共に下降が始まる。6…… 5…… 4。ガクンと軽い衝撃が来て、ドアが開いた。前には薄暗いホールがあり、左右に通路が伸びていた。

「ここでいいんだよね?」

 もう一度ドア上の階数表示を見る。なんと表示は「6」が光っていた。

「え…… ど、どういうこと?」

 見間違いかと思って何度も見る。間違いなく「6」だ。

「確かにエレベータは下がったのに」

 もう一度中へ入って、しっかりと「4」を押す。ポンと軽い音がして、下降する浮遊感が来る。階数表示は5が点滅。やがて「4」が点いた。私は何度も「4」が点灯しているのを確認して、ドアが開くのを待った。
 しかしそこはやはり薄暗いホール。突き当たりには左右に伸びた通路。エレベータの表示を見ると、「6」だった。

「……どういうこと?」
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