シリアル・ホラー
 不思議に思って首を捻るものの、とりあえずおそるおそる降りてホールに出る。電灯は点いていないが、窓からの光でそれなりに見通せる。エレベータホールは25㎡ほどの広さで、壁際に白い内線電話がある。壁には顔のないバレリーナの絵が掛けられているが、それだけだ。ところどころ塗料が剥げている薄緑色の壁は、私の頭くらいの高さからベージュ色に変わる。蛍光灯のある天井も同じベージュ色だ。
 通路は左右に伸びていて、このホールはビルのほぼ中央にあるのだとわかる。通路まで出ると、私は左右を見た。
 右の通路には、左側に三つのドアが並んでいる。どれも同じ作りで、薄いブルーの木製のドア。すべて手前に引く形だ。まん中に磨りガラスの窓が付いているが、当然部屋の中は見えない。通路の右側には同じようなドアが手前に一つ。奥にはトイレらしきドアのない入り口が見えた。壁に男女のトイレマークが付いていることから、トイレに間違いはないだろう。突き当たりには高い位置にはめ殺しの窓があり、外からの弱い光で通路を照らしている。今日は曇りだからそれほど日差しは強くはない。それでも室内を見通せるだけの光量は降り注いでいた。
 左の通路には、向かい合わせに三つずつのドアが並んでいた。やはり右と同じ、薄いブルーの木製ドア。開くと音がしそうな気がする。ドアにプレート的なものはなく、どこがなんの部屋なのかはわからない。とりあえず、人の気配がまったくないのが気になった。
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