シリアル・ホラー
このビルはテナントビルだから、いくつかの企業が入居しているはずだ。小さなビルだから、中小企業だろうけど。それでも就業時間が始まっているこの時間帯に、人気がないというのはおかしい。電話の音などもしないし、とにかく人の気配がしない。
私はとりあえず、右の通路の一番手前のドアをノックしてみた。しかし、中からは何の反応もない。
「あのっ、すみません!」
少し強めに叩いてみる。磨りガラスがガタガタしたけど、構ってなんかいられない。時間はすでに10:10過ぎだ。10分も遅刻してしまっている。しかし、やはり中からはなんの反応もなかった。
私は思いきってドアノブを掴み、捻ってみた。
「……開かない」
ドアには鍵が掛かっていて、開く気配はない。隣も、その隣も同じだった。予想はしていたけど、左の通路の全てのドアも同じだった。ノックをしてもなんの反応もなく、ドアは開かない。念のためトイレを使ってみたけど、水は普通に出た。
「なんなの?」
私はエレベータに戻り、▽ボタンを押した。ポンと軽い音がして、ドアが開いた。私はまた乗り込み、「1」のボタンを押す。しかしやはり、辿り着くのは「6」だった。
「一体どういうことよ!」
エレベータホールに私の声が吸い込まれていく。そしてはっと気づいて、ポケットからスマホを取り出した。表示されている時間は10:20だった。タップして「鄭厘公司」を呼び出す。スピーカからは、普通に呼び出し音が聞こえてなんだか安心した。私はまだ世界とつながっている。なんだか世界から取り残されたような気がしていたのだ。
私はとりあえず、右の通路の一番手前のドアをノックしてみた。しかし、中からは何の反応もない。
「あのっ、すみません!」
少し強めに叩いてみる。磨りガラスがガタガタしたけど、構ってなんかいられない。時間はすでに10:10過ぎだ。10分も遅刻してしまっている。しかし、やはり中からはなんの反応もなかった。
私は思いきってドアノブを掴み、捻ってみた。
「……開かない」
ドアには鍵が掛かっていて、開く気配はない。隣も、その隣も同じだった。予想はしていたけど、左の通路の全てのドアも同じだった。ノックをしてもなんの反応もなく、ドアは開かない。念のためトイレを使ってみたけど、水は普通に出た。
「なんなの?」
私はエレベータに戻り、▽ボタンを押した。ポンと軽い音がして、ドアが開いた。私はまた乗り込み、「1」のボタンを押す。しかしやはり、辿り着くのは「6」だった。
「一体どういうことよ!」
エレベータホールに私の声が吸い込まれていく。そしてはっと気づいて、ポケットからスマホを取り出した。表示されている時間は10:20だった。タップして「鄭厘公司」を呼び出す。スピーカからは、普通に呼び出し音が聞こえてなんだか安心した。私はまだ世界とつながっている。なんだか世界から取り残されたような気がしていたのだ。