シリアル・ホラー

4 妄想

「死ね! 死ね! 死ね!」

 ボクはナイフを何度も相手の腹部へ突き刺す。お腹は骨がないから、なんの抵抗もなくサクッと突き刺さる。でも脂肪分も多いから、抜くたびにナイフが黄色い脂肪でヌラヌラ光る。鮮血の赤だけが好きなボクにとっては、脂肪の黄色も骨の白も必要ない。

「おらああああああああっ!」

 相手が倒れても、馬乗りになって両手で握りしめたナイフを何度も振り下ろす。胸、腹、首、肩、腕、顔、頭…… 身体中至るところに、赤い切れ目が増えていく。流れ出ていく血とともに、命も流れていく。

「はははははっ! 死ね死ね死ねぇ!」
「おい、ヤマザキ!」

 バシンッと大きな音がして、ボクの視界に教室の風景が戻ってきた。

「なにニヤニヤしてぼうっとしてるんだ。また、イヤらしいことでも考えていたんじゃないか?」
「ま、またって……」
「ええ~っ? タクヤくんってヘンタイだったの?」
「まじかよ、やべぇ」

 クラスが爆笑する。
 ボクは顔に熱を感じながら下を向いた。
 くそっ! くそっ! くそっ!
 今度は英語教師の南を、滅多刺しにして殺してやる!
 ボクはまた心の中で鋭く光るナイフを握りしめた。

 ボクは妄想が好きだ。
 特に、嫌いなヤツを殺すのが大好きだ。
 ボクの心には、殺人鬼がいる。
 かなりヤバいヤツだ。
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