シリアル・ホラー
「わあああああああっ!」

 明るい朝の日差しの中、ボクはめちゃくちゃに走った。なぜ父さんと母さんが。ボクはそんなこと妄想したことなかったのに。
 いや待て、本当に妄想したことなかったか?

『おかあさんなんかしんじゃえ!』
『くそオヤジ死ね!』

 かつて自分の部屋で、そんな風に荒れたことはなかったか?

『こんな世界滅びちまえ!』

 そんな恨みを抱いたことは?

『みんな死んじまえ!』
『学校爆発しろ!』
『人類滅びろ!』

 そう呪詛を吐いたことは?

 ある。

 あった。

 そう、ボクは……

 激しい警笛の音。

 目の前に眩しい光が広がっていた。



「今朝7:25分頃、JR□◎駅で、人身事故が発生しました。□◎駅では上下線ともに運休が続いており、復旧の見込みは立っておりません――」
「タクヤくん、どうして自殺なんかしちゃったんだろうね」
「なんか妄想が酷かったらしいよ。友達とか先生とか親とか、みんな妄想の中で殺しちゃってたんだって」
「怖っ!」
「いっつもブツブツなんか言ってたもんな」
「お葬式、タクヤくんのお父さんとお母さん、泣いてたね」
「容崎先生とか南先生も泣いてた」
「おれたちでなんとかできなかったかなぁ」
「バッカ、それこそ妄想で殺されてたぞ」
「だって所詮妄想だろ? 別に怖くねぇよ」
「でも、妄想でも殺されちゃったら嫌だなぁ」
「じゃあ、殺されねぇようにいい子になるか?」
「いい子ってなに?」
「人を嫌わない子、人に嫌われない子」
「そんなん無理じゃん」
「だよなぁ」
「おれもいつか誰かに殺されそう」
「こうしてる今も、誰かに殺されてるかもよ」
「キモッ!」

―― 了 ――
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