シリアル・ホラー
「おい、早く来いよ!」

 下校時間になって帰りの支度をしていると、和志くんたち3人が、廊下に出て行くのが見えた。丸夫くんを引っ張っている。またどこかに寄り道して、丸夫くんをいじめるつもりなんだろう。

「いぃ~たぁ~いぃ~よぉ~」
「けっ、ば~か!」

 達也くんが丸夫くんの大きなお尻を蹴っ飛ばす。ベチンという痛そうな音がして、丸夫くんが悲鳴を上げた。

「や、やめなよ!」

 私は思わず、反射的にそう言ってしまった。

「え?」

 和志くんたちが驚いてこっちを振り返った。丸夫くんもぼーっとした顔で見ている。
 やっちゃった……

「あ、あの…… せ、先生来るから……」
「はっ、クソ沢なんて怖かねぇよ」
「てめぇら、チクんなよ!」
「おら、行くぞ丸夫!」
「デブ夫!」

 「ぎゃははは」という笑い声が、廊下を遠ざかっていく。私の胸はかなり激しくドキドキしていた。

「美里(みり)~、どうしたの? 丸夫なんかの味方して」
「野村くんたちに目ぇつけられるよ」
「う、うん……」

 仲のいい女子たちが私を囲んで心配してくれる。でも私の心配より、丸夫くんの心配をしてほしい。そんなこと言えないけど。

「帰ろ」
「……うん」

 私はおしりを蹴飛ばされながら廊下を遠ざかっていく丸夫くんを見て、また小さくため息をついた。
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