推しにおされて、すすむ恋


「もしゆのが新しいメンバーになったら。俺は、同じメンバーを好きになってるわけでしょ?ヤタカが許してくれるかな」
「許すも許さないも、ウチは恋愛禁止じゃないんだし。そこはイイんじゃない?」
「うーん、でもなぁ」


視線を上げる。空には雲がポツポツ浮かんでいて、亀と同じくらい、ゆっくりとしたスピードで移動している。

いいなぁ、のんびりしていて。
心臓がうるさい今の俺と、変わってほしい。


「俺さ、ヤタカに大恩があるから、強く言えないんだよね」
「大恩?」

「実は一度、ファンに身バレしそうになったんだ」
「え⁉」


あれは、二か月くらい前のこと。

個人でライブ配信してたけど、その日は気分を変えて外で撮影しようと思って……でも、それが間違いだった。すぐに雨が降ってきて、配信を中断した。

リスナーに申し訳ないから、雨宿りする俺の写真を撮って、SNSに上げた。すると、同じ場所に女の子がいた。

その子が持つスマホ画面には……なんと、さっき俺がアップした写真が写っていた。

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