推しにおされて、すすむ恋

「私ね、確かにノアが好きだよ。
でも、それは……推しとして好きなの」
「推しとして?」


コクリ。私は頷く。


「動画の中のノアは確かにカッコよくて、勉強も分かりやすくて……応援したいって思った。ノアのことを少しでも知りたくて、SNSを追っかけたりした。

だけど、玲くんと話すようになったら……頭の中に、ノアより玲くんがいた。

気づいたら、玲くんのことばかり考えていたの」
「!」


ピクッと、玲くんの瞳が動く。

何か言いたそうな唇を無理にキュッと締めて、「それで」って。なんだか泣きそうな声に、つられて私も、鼻の奥がツンとする。


「玲くんがノアだって知ってからも、仮ステラとして合宿に参加した時も。Neo‐Flashのノアじゃなくて、同じクラスの玲くんとして、ずっと見てたの。

ノアじゃなくて、玲くんって。
ずっと、そう呼んでた。

もう私は、ノアよりも、ずっと玲くんのことが好きなんだよ――わっ」


急に、視界がぐらりと揺れた。
そして温かな体温に包まれる。

目を開けると、前にいた玲くんの頭がすぐ横にあって……あぁ、抱きしめられているんだって。遅れて気づく。
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