推しにおされて、すすむ恋
「ノア推しってことは、数学が苦手なの?」
「そう、そうそう!」
「じゃあ、その数学の成績が上がったら〝おねだり〟してみたら?」
「うぅ……」
正論を言われ、黙るしかなくなった私に、お姉ちゃんが不敵な笑みを浮かべる。
「ところでさ。ゆの、暇だよね?」
「え?」
「ちょっとこっち来て。お化粧しよっか」
「お風呂上りなのに⁉」
バタバタ暴れる私を押さえ、お姉ちゃんは素早く私の顔に化粧を施した。
しかも最後には、お姉ちゃんと同じ髪型のウィッグまでつけられて……。
鏡を見ると、そこに写っているのは「お姉ちゃんの姿をした私」。喋らなければ、どこからどう見てもお姉ちゃんだ。
「えっと、すごい魔法だね……?」
「そうそうスゴイでしょ?今から撮影が始まるんだけど、私の代役を探していたの」
「ん?撮影?」
「初めの数分は私もついてるから、安心して。ゴメンだけど、向こう一週間は私の代わりをしてほしいの」
瞳をウルウルさせて、私に「お願い」のポーズをしてくるお姉ちゃん。かわいい……じゃなくて!