推しにおされて、すすむ恋

次の日。
「推しの打ち合わせに同席した」事実に、興奮してなかなか寝られなかった私は……寝不足でフラフラする足に力を入れながら、教室に到着した。


「おはよー、ゆの」
「まーちゃん。おはよう」


同じクラスの日坂 麻衣美(ひさか まいみ)ちゃん。
黒髪のショートがカッコイイ、美人さん。

一年生から仲良しになった子だよ。
奇跡的に、二年生も同じクラスになれたから幸せなんだぁ。


「ゆの、なんか眠そう?」
「そう。脳が私を寝かしてくれなくてさ……」

「またNeo‐Flashの動画を見すぎたんでしょー?」
「ちょ、まーちゃん!しーッ」


引っ込み思案な私は、クラスの皆に「推しがいる!」って言えないでいる。言ったら言ったで、仲間が増えそうな気もするんだけど……なかなか一歩が踏み出せないでいる。

だから昨日も、誰もいない教室を狙って動画を見ていたの。推しについて堂々と語れたら、すごく楽しいだろうなぁ。


「はぁ……」
「何か悩み?小鈴さん」

「ん?」


この声は……!
ギギギと後ろを向くと、黒髪サラサラな綾瀬くんが、心配そうに私を見つめていた。

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