推しにおされて、すすむ恋
「わぁ!いや、あの!ごめん、何でもないの」
「そう?大きいため息が聞こえたから」
「き、聞こえちゃった……?」
「聞かなかったこと、にする事もできるよ?」
クスクス笑う綾瀬くん。
クールと言われている人が、そんなお茶目なこと言うなんて!
ギャップが面白くて「じゃあ聞かなかったことにしてください」と、素直に自分の気持ちを伝える。
そう言えば――綾瀬くんには「Neo‐Flashのノアが推し」って言う事が出来たんだよね。すごく自然に言えたから、自分でもビックリした。それに、さっきも自分の気持ちに素直になれた。
綾瀬くんって、不思議な人だな。
「そうだ!綾瀬くん、足はどう?」
「うん。帰って湿布を貼ったら、だいぶ良くなったよ。来週までに治ってくれるといいんだけど」
「来週?何かあるの?」
すると綾瀬くんは「え、だって」と言ったけど、何も離さず口を閉じる。
そして、しばらく考えた後。首を横に振った。
「ううん、何でもない。
来週はちょっとね、旅行に行くんだ」
「へぇ、いいね!ゴールデンウイークだもんね」