推しにおされて、すすむ恋
だけど荷物を運ぶのに必死な私は、全く聞いていなくて。何の警戒心もなく、ホームに足を降ろす。
ガクッ
「うわぁ!」
「ゆの!」
ガシッと、綾瀬くんが私のお腹に手を回す。それにより電車からズリ落ちることなく、何とかホームに足が着いた。
「あ、ありがとう綾瀬くん……っ」
「それより、怪我はない?」
「綾瀬くんのおかげで、大丈夫!」
「よかった。コレの恩返しが出来たかな?」
コレ、と言った時。
いつか綾瀬くんが捻挫した足を指さす。
もうスッカリ治ったのか、綾瀬くんはしっかりした足取りでホームに降り立った。
「集合場所は改札出てすぐ、らしいけど。どこだろう?」
改札を探す綾瀬くんの隣で、はたと。さっきの光景を思い出す。
『ゆの!』
そう言えば、名前で呼んでくれたよね?
私の苗字でも、ステラでも、お姉ちゃんの名前でもなくて……。
綾瀬くんは、確かに私の名前を呼んでくれた。
「……っ」
「ん?どうかした?」
「ううん!何でもない……ん?」
周りからザワザワした声が聞こえる?