推しにおされて、すすむ恋

私の悩みを聞き出せたと思ったらしい。
ヤタカは満足げに、口に弧を描く。


「俺がお得意のモノマネを披露するから、それを見てステラも勉強し、」
「あ、ごめん!まだ荷物の整理が終わってないから、勉強はまた後で!」


少し長い前髪。その向こうで、髪と一緒の明るい茶色の瞳が、迷わず私を追う。


「茶化すな、ステラ。
それで?
本当に悩みってのは、ねーのかよ?」
「え、うん……ないよ?」


お姉ちゃんはさておき。
今の私の悩みって「仮ステラを務めるのが難しい」に限るから、ヤタカに相談なんて出来たもんじゃないし……!

でも……こうやってメンバーの事を心配してくれるんだ。さすがリーダーだなぁ。


「ありがとう、ヤタカ。私なら大丈夫」
「……あっそ。ま、何かあったら言えよ」


髪の毛をグシャっとして、退出するヤタカ。
今の……撫でてくれたんだよね?


「ヤタカって、よくコメントで〝頼りになるお兄さん〟って書かれてるけど、本当にその通りだなぁ」


ヤタカのいなくなった部屋を見回していると、ポトッと頭から何かが落ちる。見ると、髪を括っていたヘアゴム。

さっきヤタカに撫でられた時、緩んで落ちちゃったんだ!

鏡を見ると、ステラではなく私が写っている。こんな子供っぽい顔を見られたら、即バレだよ!

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