推しにおされて、すすむ恋
「みんな帰ってるかと思ってた。一人で喋っててごめんね……」
「……いや、気にしてない」
「綾瀬くんは?どこかに行ってたの?」
「ちょっと用事」
「そっか」
「……」
か、会話が広がらない。
私がもっと話し上手だったら、こういう時、どんどん話が盛り上がるんだろうけど……!
申し訳なくなったから、私も荷物の整理をして、帰るために席を立つ。
外を見ると、夕日が世界をオレンジ色に染めていた。四月の終わりということもあって、地面にはオレンジ色に染まった桜の花びらがヒラヒラ舞っている。
「じゃあ綾瀬くん、またね」
「……帰るの?」
「綾瀬くんは帰らないの?最終下校のチャイム鳴っちゃうよ?」
「……」
綾瀬くんが、ジッと私を見つめる。
え、なに?私の顔に、何かついてる?
思わずサッと頬を撫でたけど、何もついてない。よ、よかったぁ~。
だけど、安心するのは早かったみたい。綾瀬くんは自分のカバンを持ち上げた後、胸を撫で下ろす私を見て、こう言った。
「一緒に帰らない?」