推しにおされて、すすむ恋
「え、一緒に?」

「嫌?」
「い、嫌じゃないよ!」


でも学年一モテる綾瀬くんと私が一緒に帰るなんて、他の人に見られたら何て噂がたつか!……いや、逆に噂にもならなかったりして?


「う~ん……」
「――ふっ」


私のジレンマを見越した上で、綾瀬くんは「大丈夫」と。校舎の裏側を指さした。


「裏道から帰ろう。そうすれば人目につかないから」
「う、うん」


人目につかないんだ、よかった!
……ある意味、ドキドキもするけど。

でも初めて綾瀬くんとたくさん喋れそうだし、一緒に帰るのが楽しみだな!


なーんて。
思っていたけれど。

無事に学校を出て岐路についていると、綾瀬くんに緊急事態が発生した。


「小鈴さんって、好きな人がいるの?」
「え?」

「ごめん。さっき〝カッコイイ〟って呟いてたのが聞こえて」
「あぁ!ごめん、一人でブツブツ言って、完璧に変な人だったよね。実はね、推しがいるの」

「推し?」
「Neo‐Flashのね、」


「Neo‐Flash」と言った瞬間。
ゴキッ、って音がした。

見ると、隣を歩いていた綾瀬くんの姿が見えない。「え?」と後ろを振り返ると、彼は片膝を立て、足首に手を添えていた。

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