推しにおされて、すすむ恋


「ステラ?どうかした?」
「う、ううん。何でもない!」


なかなか移動しない私を、玲くん含め皆が見る。

……そう。今は撮影中。
私は、Neo‐Flashのステラ。

動画でのステラは、いつもカッコよくて、可愛くて、センスがある。臨機応変に対応した発言が出来る、チームの大黒柱的な役割を担っている。

だから私も――
こういう時こそ、しっかりしなきゃ!


「こ、心の準備してたの。本当よ?」
「はいはい。分かったから早くいけ、ステラー」


ヤジを飛ばされながら、カメラの前に立つ。

深呼吸、スーハ―。
画面を見ると「ステラちゃん、ファイト!」って応援コメントが、たくさん届いている。

……うん。落ち着いた。
今の私なら、できる!


「〝君は一人じゃないよ。私がいる。
あのお星さまみたいに、一緒に手を繋ご?〟」


無事に言い終える。
すると……緊張が、また戻って来た!

「以上です!」と、逃げる形でカメラからフェードアウトする。

はぁ~、いくら顔が見えないとはいえ、緊張するよ!
でも……セリフを噛まなかったよね?

よし、やり切った!
私、今すっごい満足してる!

自信満々で皆の所へ戻る。
だけど、その場では何やらヒソヒソ話が繰り広げられていた。

< 94 / 152 >

この作品をシェア

pagetop