恋風撫でる頬
春の終わりにサッカー部の練習試合でスポーツドリンクをくれた、Q高校の三年生だった。
彼と一緒にいた女の人が、
「あ! あんた達、何やってんの!! 先生呼ぶよ!?」
と、彼らから私を離して、私のそばにいてくれる。
「大丈夫? 何もされてない?」
私はこくこく、と頷く。
「怖かったよね? こいつら、私と同じクラスの奴! あんた達モテないからって、何やってんのよ!!」
「やべー、笠松さん、黙ってて」
「ってか、オレらと一緒に回って?」
三人はケラケラ笑いながら、それでも足早に去って行く。
「ちょっとこのこと、先生に言ってくるわ」
と、笠松と呼ばれた女の人が走ってどこかへ行ってしまった。
「大丈夫?」
Q高校の三年生は私の顔をのぞきこむ。
私は頷いてから、お礼の意味を込めてお辞儀した。
……助けてくれた。
さっきまで怖い気持ちで凍えそうだった心が、少しずつあたたかくなってくる。