恋風撫でる頬
「ちょっとどこかに座って落ち着いたほうがいいよ」
と、校舎に向かって一緒に歩いてくれる。
足が震えてゆっくりしか歩けない私に、歩幅を合わせてくれる。
(優しい人なんだろうな)
心の奥に片付けたはずの恋心が、いつの間にか胸の真ん中に顔を出している。
だけど、さっきは制服の女の人、……笠松さんと歩いていた。
きっと恋人同士なんだろうなぁ。
多分、笠松さんが通っているこの高校の文化祭に、彼氏としてやって来たんだ。
(文化祭を一緒に回りたいから、恋人に入場チケットを渡したって言ってた子が他にもいたもんね?)
そうだよ。
章二くんだって言ってたじゃない。
可愛い恋人がいるかもって。
(笠松さんが、そうなんだ)
再会できて嬉しいのに。
助けてもらえて、安心したのに。
私、失恋したんだ…………?
その時、校舎から章二くんが出て来た。
私と彼を見て、驚いた目をしている。
そして、こう言った。
「なんで、先輩が……?」