恋風撫でる頬

てっきり恋人だと思っていたから。

失恋したと思って、しぼんだ心が。

みるみるうちに膨らんできた。



「えっと、寺島くんだよな? ここの、サッカー部の一年生の」
と、彼は章二くんに確かめる。



はい、と返事をした章二くんに、こう言った。



「この子のそばにいてあげて。オレ、落ち着けるように飲み物でも買ってくる」



そしてこの場から去って行こうとしたので、私は思わず彼の着ている上着の裾を掴んでしまった。



「?」

「美春?」



彼も章二くんも驚いた顔をして、こちらを見ている。



「あ、ご、ごめんなさい」



顔が真っ赤になっているのが、自分でもわかる。



でも。

行ってほしくなくて。

そばにいてほしくて。



その時。



「美春〜、探したよー!教室前にいないんだもーん」
と、手に出店で買ったらしい紙コップ入りの唐揚げを持って、優里亜ちゃんが現れた。



「ん? なんで章二といるの?」
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