恋風撫でる頬

こういう時。

うまく自分の気持ちを相手に伝えられたならいいのにって、いつも思う。

だけど、私にはそれが難しい。



小学生の時。

自分の気持ちや意見を言って、周りから嫌がられたりウザがられたりした。

やがてその経験は傷となり、トラウマになった。



そのことがあって、私は極力、自分の気持ちなどを表に出さないように努力して。

その結果、意見も何も言えなくなってしまった。







「川北ー!」
と、サッカー部顧問の先生が優里亜ちゃんを呼んでいる。



「ごめん、行ってくるね!」



優里亜ちゃんは慌てて先生のほうへ走って行った。



(お手伝いしたかったのに、かえって迷惑かけちゃったな)



情けなくなってきて、涙目になる。



その時。

ホイッスルが鳴った。

試合が終わったらしい。



負けたA高校のサッカー部員は、相手チームのQ高校の人達と何かを話して、健闘を讃え合っているように見える。



(片付けだけでも手伝えるように頑張ろう)
< 2 / 102 >

この作品をシェア

pagetop