恋風撫でる頬
こういう時。
うまく自分の気持ちを相手に伝えられたならいいのにって、いつも思う。
だけど、私にはそれが難しい。
小学生の時。
自分の気持ちや意見を言って、周りから嫌がられたりウザがられたりした。
やがてその経験は傷となり、トラウマになった。
そのことがあって、私は極力、自分の気持ちなどを表に出さないように努力して。
その結果、意見も何も言えなくなってしまった。
「川北ー!」
と、サッカー部顧問の先生が優里亜ちゃんを呼んでいる。
「ごめん、行ってくるね!」
優里亜ちゃんは慌てて先生のほうへ走って行った。
(お手伝いしたかったのに、かえって迷惑かけちゃったな)
情けなくなってきて、涙目になる。
その時。
ホイッスルが鳴った。
試合が終わったらしい。
負けたA高校のサッカー部員は、相手チームのQ高校の人達と何かを話して、健闘を讃え合っているように見える。
(片付けだけでも手伝えるように頑張ろう)