恋風撫でる頬
彼は。
自分が助けたことよりも、してもらったことを懐かしそうに話した。
それが、私にはとても尊いことのように思えた。
(やっぱり好きだな……)
このまま、またお別れなんて嫌。
そう思って。
私は、ごくんっと生唾を飲んで、「あのっ」と、切り出した。
「こい、……恋人っていますか?」
「えっ? ううん。いないよ」
「あの、じゃあ、教えてほしいんです……」
「ん?」
中庭には大勢の生徒や、先生がいる。
わたあめと書かれた看板のそばに、長めの行列が出来ていた。
私はスマートフォンを制服のポケットから取り出し、
「あの、連絡先を……教えてもらえませんか?」
と、再度言った。
「あぁ、オレの連絡先?」
と、彼もスマートフォンを取り出す。
「いいよ。オレので良ければ」
そう言って、ニッコリ微笑んでくれた。
嬉しくて。
心臓が体中に響くリズムで、踊っているみたいだった。
「オレは、笠松っていいます。笠松 恭介」
「笠松……先輩」