恋風撫でる頬
操作する指が、心なしか震えてきた。
「……じゃあ、返事するね」
「頑張れ、美春!」
慣れたフリック入力なのに。
緊張からか、打ち間違えてばかりで。
思ったよりも時間をかけて、ようやく返事を打った。
《土曜日、一緒に映画館へ行きたいです。
よろしくお願い致します》
「よし、送れ!」
と、画面を覗いた章二くんに言われて、私は大きく頷く。
「人のスマホの画面覗くな!」
優里亜ちゃんが章二くんに注意している隣で。
私はメッセージを送信した。
恭介くんがそのメッセージを読んだ証に、既読マークが付いたのは、送信したほんのすぐ後で。
彼から送られてきた、イラストの猫が『楽しみ』と笑っているスタンプを、それから何度も何度も見つめてしまった。