恋風撫でる頬

第二話


土曜日。

待ち合わせたのは、映画館のそばの駅前本屋さんの前。



(待ち合わせ時間よりだいぶ早く来てしまった)



昨夜からそわそわしてしまって。

ろくに眠れなかった。



(まるで小学生の頃の遠足前みたいな気持ち……)



楽しみ過ぎて。

でも、緊張もしてしまって。

心が落ち着かない。






待ち合わせ場所を駅前本屋さんの前にしたのは、恭介くんの提案だった。

目印としてわかりやすいし、どちらかが先に来て待つことになっても、本屋さんで時間を潰すことだってできる。




スマートフォンで時刻を確認すると、待ち合わせ時間まではあと十五分くらいある。

本屋さんに入ってもいいけど。



(ここで立って、待っていたいな)



そう思って、私は通りを見つめた。



だって。

私との待ち合わせに向けて。

やって来る彼を、見つけたい。



どんな表情で来てくれるのかな。

どんなふうに声をかけてくれるかな。
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