恋風撫でる頬

恭介くんとしばらく映画の話を楽しんだ。

彼はアクション映画をよく観ると話してくれて、中でもお気に入りだと教えてくれた映画は、私も観たことのあるものだった。



「美春ちゃん、アクションも観るの?」

「……あの、映画が大好きで……、わりと何でも観ます」
 


そう答えると、恭介くんは嬉しそうにニイッと口角を上げ、
「じゃあ、また一緒に映画館行こうね」
と、言ってくれた。








恭介くんが「帰ろっか」と言ったのは、それからしばらくしてからだった。



スマートフォンで時刻を確認している恭介くんを見て、なんだか寂しい気持ちに襲われた。



(早く帰りたいのかな)



もしかして。

楽しんでいるのは私だけで。

恭介くんにはつまらなかった?



(私、うまく話せていないから……?)



さっきは『また一緒に映画館行こうね』って言ってくれたけれど。

本当にまた行けるのかな?
< 36 / 102 >

この作品をシェア

pagetop