恋風撫でる頬
恭介くんとしばらく映画の話を楽しんだ。
彼はアクション映画をよく観ると話してくれて、中でもお気に入りだと教えてくれた映画は、私も観たことのあるものだった。
「美春ちゃん、アクションも観るの?」
「……あの、映画が大好きで……、わりと何でも観ます」
そう答えると、恭介くんは嬉しそうにニイッと口角を上げ、
「じゃあ、また一緒に映画館行こうね」
と、言ってくれた。
恭介くんが「帰ろっか」と言ったのは、それからしばらくしてからだった。
スマートフォンで時刻を確認している恭介くんを見て、なんだか寂しい気持ちに襲われた。
(早く帰りたいのかな)
もしかして。
楽しんでいるのは私だけで。
恭介くんにはつまらなかった?
(私、うまく話せていないから……?)
さっきは『また一緒に映画館行こうね』って言ってくれたけれど。
本当にまた行けるのかな?