恋風撫でる頬
もしかしたら恭介くんとのお出かけは。
今日で最後かもしれない。
(そんなの、やだ……)
まだ一緒にいたい。
またどこかに行きたい。
(そんなふうに考えてしまうなんて、私、わがままかな……?)
「美春ちゃん?」
恭介くんが私を見る。
「どうしたの? 気分でも悪い? 体調が良くないの?」
私は首を振る。
「大丈夫です……。…………でも」
「ん? でも?」
「まだ、あの、…………一緒に」
「?」
私はひざに置いていた手をぎゅっと握って。
のどから絞り出すように、こう言った。
「…………一緒に、い、たいです」
恭介くんの顔が見られなくて。
慌てて俯く。
こんなことを伝えるなんて、恥ずかしい。
だって私、恭介くんの恋人でもないのに。
おこがましい……、のかな……?
恭介くんは何も言わない。
私達の間に、沈黙がおりる。