恋風撫でる頬
(あぁ、言わなきゃ良かった……)
もしも。
今、顔をあげて恭介くんを見た時に。
嫌そうな顔をされていたら、私。
(絶対に立ち直れない)
「美春ちゃん」
と、恭介くんが言った。
「こっち、見て」
ゆっくり顔をあげる。
恭介くんの顔を見た。
「!」
私の勘違いかな。
恭介くんの頬が、少しだけ赤い気がした。
「オレもまだ、美春ちゃんと一緒にいたいけど」
と前置きして、恭介くんは言った。
「でも今日はもう帰ろう? 暗くなってから家に帰すのは、オレすげー心配だから」
「……えっ?」
「空がまだ明るいうちに、今日は帰ろう?」
そういうことだったの?
私のことを心配してくれて、言ってくれていたんだ?
勝手に不安がって。
恭介くんの優しさに気づけなかった。
「あの、ごめんなさい」
「ん? なんで?」
「わがまま、言いました……」