恋風撫でる頬
すると恭介くんは、
「美春ちゃんにわがまま言われるの、オレ嬉しいよ?」
と、言った。
何を言ってるんだと言わんばかりの顔で。
「すごく嬉しいし。ってか、内心喜んでたし」
恭介くんはニコニコして、
「しかも、わがままとか思ってもなかったし」
と、笑った。
「……そう、なんですか?」
「そうなんですよ」
恭介くんが楽しそうだから、つられて笑ってしまう。
「じゃ、帰ろっか。美春ちゃん、また絶対に映画館行こうね」
今度は元気よく頷いた。
カフェを出て、
「駅まで送るね」
と言われたから、さっき待ち合わせた駅前で別れるつもりで歩いていたら。
「美春ちゃん、電車? バス?」
「電車です。海方面の、B駅が最寄りなんです」
「そっか。わかった」
なんてことない会話だと思っていたけれど。
恭介くんが駅に着いて、改札を通った時。
「えっ?」
と、気づいた。