恋風撫でる頬

「美春ちゃん?」

「あ、ううん。何でもないです」



平静を取り繕って。

私は恭介くんに続いて、いざ動物園の中へ。



だけど、心の中は言うまでもなく大騒ぎ。



(デートなんだ?)



嬉しくて。

実際には踊れないけれど。

今の私の気持ちで、もし喜びのダンスを踊るとしたら……。

……サンバだと思った。

ピーピーと笛を鳴らして、サンバを踊りまくるカーニバル状態だ。



だけど。

どうして市立動物園を選んでくれたんだろう?

私が行きたいって、話したっけ?

ううん、そんなこと言ってない気がする。



(恭介くんも動物、好きなのかな?)



「美春ちゃん、どこから見たい?」



恭介くんが私を振り返って聞いてくれる。



「えっと……」



言っていいのかな。

いや、ここは恭介くんが見たい動物から見たほうがいいんじゃないかな?

でも……。



モヤモヤ考えていると。



「キリン、先に見に行く?」
と、恭介くんが聞いてきた。
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