恋風撫でる頬

「おーい、マネージャーの人、こっちにいる!」
と、別のQ高生が彼に声をかける。



「じゃ、オレはこれで」



彼は私に一礼し、背中を向けて去って行く。



(あ……、行っちゃう)



またどこかで会えたならいいのに。

名前、聞いておけば良かったな……。



(そんな勇気、私にはないけれど)



しょんぼりしつつ、貰ったスポーツドリンクをひと口飲んで、鞄に入れる。

こちらに帰って来た優里亜ちゃんに教えてもらいながら、片付けを始めた。



Q高校の人達は先に帰るらしく、挨拶をして校庭から出て行く。



もう一度だけ顔が見られたなら、と探してみたものの、たくさんのサッカー部員が一斉にぞろぞろ歩いているので、ついにわからずじまいだった。



「あれ? 美春も来てたの?」
と、声をかけてきたのは、同じクラスの寺島 章二(てらしま しょうじ)くんだった。



頷いて答えていると、
「じゃあ、さっきQ高校の三年生と話してたのは、美春だったんだ」
と、章二くんは言う。
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