恋風撫でる頬
第三話
市立動物園のふれあい広場は、園内の奥にある。
ふれあい広場に向かって歩き出すと、だんだん人が多くなっていく。
「みんな、ふれあい広場に行くんだね」
「人気なんですね」
恭介くんと並んで歩いていたけれど、次第に混雑してきたので、
「オレの服、掴んでて。はぐれないように」
と、言われる。
私は頷き、おそるおそる恭介くんの着ている上着の裾を掴む。
それだけで、なんとなくドキドキしてしまう。
それから二分も経っていないと思う。
恭介くんが私を振り返って、
「やっぱり、こっちでいい?」
と、手を差し出した。
(えっ?)
手……、繋ぐってこと?
(いいの?)
私なんかと、手を繋いでくれるの?
男の子と手を繋ぐなんて、小学校の体育の授業以来かもしれない。
戸惑い、なかなか手を繋げないでいると。
また振り返った恭介くんに、
「美春ちゃん、顔」
と、言われた。
何?
私、変な顔してる!?