恋風撫でる頬
ウサギはぴょこぴょこ跳ねていて。
飼育員さんらしいスタッフの女性が、
「抱っこもなでなでも、そっとしてあげてくださいね」
と、教えてくれる。
今、このウサギのブースには、私と恭介くん以外に、落ち着いた大人に見える、カップルらしい男女と、家族一組しかいない。
ウサギがぴょこぴょことカップルかもしれない、男性のほうへ近寄って行った。
女性がスマートフォンを取り出し、連写しだすけれど、
「あれ? オレのことも撮ってくれてる? ウサギばっかり?」
と、男性が聞いていて、
「そうね、ウサちゃん一択よ」
なんて、女性はニコニコして答えている。
「美春ちゃん、こっちに来たよ」
と、恭介くんが真っ白いウサギを抱っこした。
鼻がヒクヒクしていて、なんとも可愛らしい。
小さな体がふわふわしていることが、見ているだけで伝わってくる。
「ま、待って。撮ります!」
と、私もスマートフォンで写真を撮った。
ウサギと恭介くん。
(この画像、宝物だ)
そう思っていたら、恭介くんが私にウサギさんを抱っこさせてくれた。