恋風撫でる頬

やっぱりふわふわしていて。

生きているんだって改めて実感するほど、あたたかい体。

小さくて。

ずっと見守っていたい、と思うほど可愛い。



「ふたりの写真、撮りましょうか?」
と、さっきのカップルかもしれない、女性が話しかけてくれた。



スマートフォンを渡して、恭介くんと並んでしゃがみ、ウサギとの写真を撮ってもらう。



「彼女さん、もう少しだけ彼氏さんに寄ってくれません?」
と、女性に言われる。



「えっ、あ、あの……、はいっ」



『彼女』とか『彼氏』なんて言われて、顔が赤くなる。

本当は恋人じゃないけれど。

いいのかな。

恭介くん、嫌な思いしていないかな。



(でも)



本当は。

誤解の中だけでも。

恭介くんの『彼女』になれて。

私、ものすごく舞い上がっている。




写真を何枚か撮ってもらったあと、恭介くんもカップルのようなふたりの写真を撮ってあげていた。

その時、ふたりが全然寄り添わなかったこともあって、カップルなのかどうか、やっぱり判断は出来なかった。
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