恋風撫でる頬
そんなことを聞くと、ますます可愛く思えて、欲しくなってしまう。
「これ?」
と、恭介くんが聞いてくれる。
(どうしよう、正直に言う?)
だけど。
恭介くん、私とお揃いだなんて嫌かもしれない。
だって私、恭介くんの恋人でも何でもないのに。
プレートに入れるふたりの記念日なんて、存在しないもん。
「……美春ちゃん?」
ハッとして。
笑顔を作って見せる。
「他のお店も見る?」
と、言われて。
そのまま、お店を出てしまった。
こんな時まで。
自分の気持ちを言えないなんて。
私、ダメだなぁ。
(恭介くんには、素直でいたいのに)
恭介くんは。
きっと、嫌な顔なんてしない。
ウザがったりなんてしない。
(わかっているのに)
どうしても、怖い。
どうしても、破れない。
私がまとった、トラウマの殻。
「美春ちゃん、オレちょっと飲み物買ってくる」
と、恭介くん。