恋風撫でる頬

「一緒に行きましょうか?」
と尋ねると、恭介くんは少し慌てたようにこう言った。



「あ、いいよ。この駅ビル、屋上があるんだ。そこで待ってて」



言われた通り、私は屋上に向かって。

設置されているベンチに座って、少し暗くなり始めた空を見ていた。



(恭介くん、変に思ったかな?)



せっかく誕生日のプレゼントを選ばせてもらえているのに。

素直に言えなかったこと。

きっと、恭介くんに伝わっちゃったよね?



(……ダメだ、泣きそう)




そう思っていたら。



「美春ちゃん!」
と、恭介くんが屋上にやって来た。



「ごめん、お待たせ」



私の座っているベンチまでかけ寄ってきた恭介くんは、
「はい」
と、私に小さな紙袋を手渡してくれた。



「?」



「あげる。誕生日にはちょっと早いけど」



渡された袋には、さっきいたアクセサリー店のロゴが印字されている。
< 73 / 102 >

この作品をシェア

pagetop