恋風撫でる頬

第二話


海岸までやって来た。

赤や緑のライトが輝いているイベント会場は、華やかで賑やかで。

まるで絵本の中の世界に来たみたいに、心がわくわくと踊り出す。



「美春ちゃん、見て。トナカイのイラストが可愛いよ」



イベント会場の入り口の看板に、サンタクロースの恰好をしたトナカイが、プレゼントを持って嬉しそうにしているイラストが描かれていた。



「可愛いですね」
と、恭介くんと視線を合わす。



目が合うと、恭介くんはニコッと笑ってくれる。



(ドキドキする……)



「あ、お店もいっぱい。何か食べる? ほら、飲み物とかもあるよ」
と、恭介くんが目の前のお店のメニュー表を指差した。



その時。

恭介くんの腕からシャラッと音がした。

あの時。

私とお揃いで買ってくれた、ブレスレットだった。



(つけてくれているんだ)



嬉しくて。

つい、じっと見てしまった。
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