恋風撫でる頬

「美春ちゃん、先に謝っておくけど、ごめんね? ぎゅってさせてね」



えっ?



言われた言葉を、頭で理解するより先に。

気づいたら。

恭介くんに優しく抱きしめられていた。



「きょ、きょ、恭介くん!?」



体中が心臓になったみたいに、ドキドキする。

恥ずかしい。

恥ずかしいけど。

でも、嬉しい。



「あの、他の人に……、見られます」



恭介くんがぎゅうってしたまま。

私の耳元で、
「オレも大好きだよ」
と、呟いた。



「!!」



くすぐったい感覚と一緒に。

心があたたかくなっていく。



こんなに心地良い居場所に。

私、泣いてしまいそう。







「オレの恋人になってくれる?」








頷いた。

こくこくと、二度頷いて。



「嬉しいです」
と、伝えた。



その声が涙に混じっていて。



(『嬉しい』が溢れたら、涙に変わるんだ)




「私、恭介くんの恋人になれるんですか?」
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