恋風撫でる頬

第三話


イベント会場からの帰り道。

恭介くんと手を繋いで、ゆっくり歩いた。



もう遅いから、家まで送ってくれるって言われて。

嬉しいから。

この時間がずっと続いてほしいから。

わざとゆっくり歩いてしまう。



(まだ家に着きませんように)



そんなことを考えているって知られたら。

恭介くんなら、きっと笑うかな。






「見て、星がキレイ」
と、恭介くんが繋いでいないほうの手で、夜空を指差す。



「本当ですね、キレイ……」

「空気が冷たいからかな、結構はっきり見えるね」

「はい」



しばらくふたりで夜空を見上げた。

さっきまで海岸に近いほうの空には、打ち上げ花火の煙のあとがまだなんとなく漂っていたけれど。

今は見渡す限りすっきりとした夜空が広がっている。



キラキラと輝く夜空が、宝石を散りばめたみたいで。

その全部を集めて。

花束みたいにまとめて、恭介くんにプレゼントしたいなって思った。
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