恋風撫でる頬

「歩こう? 美春ちゃん」
と、言われて。



「……やだ」
なんて、駄々っ子みたいに俯いた。



「ん?」



私。

今のこの気持ち。

伝えたい……。



嫌われてしまうかも。

ウザがられるかも。

もしかしたら、引かれる?



でも。

素直に伝えて。

恭介くんが嫌な顔をしたことなんか、今までにあった?

ウザいって言われたこともないし。

引かれたことだってないよね?



本当の気持ち、伝えて良かったって。

思わせてくれたのは。

恭介くんだもん。



いつだって受け止めてくれた。

いつだって勇気をくれた。



「…………キス」
と、私は呟いた。



「えっ?」

「キス、しないんですか?」



顔から火が出るとはこういうことか、と実感した。

私の顔は、真っ赤だ。



それでも。



「恭介くん、キスしないんですか?」
と、勇気を出して言ってみる。
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