太陽に手を伸ばす少女
「以前のお前はよくドリアを頼んでいた」
「へぇ」
「…記憶が失くなったら好みも変わんのかな」
「…なんか、すみません」
「あぁいや、別に謝る事じゃない」
料理が来るまで暇だな、と言いながら久住さんは私の顔をジッと見つめてきて目のやり場に困った。
よくよく見ると久住さんは顔が整っていて、今更ながらに緊張する。
「…家、困らなさそう?」
「そうですね。私には勿体ないくらいいいお家です」
「そりゃあ良かった」
「何から何まですみません、任せっきりで」
「いい。俺が好きでやってる事だから。必要な物があったら連絡しろ」
「ありがとうございます」
お店に新しくお客さんが入ってくる音がする。
でもここは出入口から死角になっていてどんな人が来たのか見えない。
まるで隠れ場所のようだと思った。